化粧品の成分表で「ベヘニルアルコール」という名前を見つけると手が止まりますよね。名前に「アルコール」と付いているので消毒液のようなツンとした刺激を想像してしまうかもしれません。乾燥や肌荒れが気になる方ほどこの一語に敏感になりがちです。
結論から書くとベヘニルアルコールは消毒用のアルコール(エタノール)とは性質がまったく違う成分です。同じ「アルコール」という言葉で呼ばれていても油に近いロウのような固形の成分で肌をなめらかに整える目的で使われます。名前だけで判断すると本来の役割を見落としてしまいます。
この記事ではベヘニルアルコールやベヘン酸を中心に、菜種油などから作られる仲間の成分を、良い面と気にしたい面の両方から正直に整理します。専門用語はその場でやさしく言い換えながら進めますので化粧品を調べ始めたばかりの方も読み進めやすいはずです。
ベヘニルアルコールとベヘン酸はどちらも「炭素がたくさんつながった長い鎖」を持つ油性の成分です。もとをたどると菜種油やパーム油などの植物油に由来することが多く、そこから取り出した脂肪分を加工して作られます。動物由来ではなく植物由来が主流です。
ここで大切なのが「高級アルコール」「高級脂肪酸」という呼び方です。この「高級」は品質やお値段の話ではありません。分子の中の炭素の鎖が長いものを、化学の世界で高級と呼ぶだけです。逆に消毒用のエタノールは鎖が短い「低級アルコール」で揮発しやすくスースーします。同じアルコールでもこの鎖の長さで性質が大きく変わります。
ベヘニルアルコールは常温で白いロウのような固形です。肌に塗ってもツンとした刺激や強い脱脂の感覚はほとんどなく、むしろ油分としてしっとりとした感触を残します。化粧品では次のような役割で使われます。
ベヘン酸も同じく長い鎖を持つ成分ですが、こちらは「脂肪酸」という酸の仲間です。単体で使われるほか、他の成分と結びついて乳化を助けたり、感触を調整したりする材料になります。どちらも製品の使い心地や安定性を支える土台として幅広く配合されています。
「ベヘ」で始まる成分は種類が多く、名前が似ているので混同しがちです。もとになる骨格は共通していてもそこに何がくっつくかで働きが変わります。代表的なものを表で整理します。
| 成分名 | タイプ | 主な役割の傾向 |
|---|---|---|
| ベヘニルアルコール | 高級アルコール(油性) | 感触の調整・乳化の安定 |
| ベヘン酸 | 高級脂肪酸 | 感触の調整・他成分の材料 |
| ベヘネス-30 | アルコールに水なじみを付けたもの | 水と油をなじませる乳化 |
| ベヘントリモニウムクロリド | 陽イオン性の成分 | 髪をなめらかに整える |
| ポリオキシエチレンベヘニルエーテル | 水なじみを付けたアルコール | 乳化を助ける |
| ジベヘン酸グリセリル | 脂肪酸とグリセリンの結合物 | 感触の調整・乳化の安定 |
ポイントはもとの油性成分に「水になじむ部品」を付けると水と油をなじませる成分(界面活性剤)に変わるという点です。ベヘネス-30やポリオキシエチレンベヘニルエーテルがこれにあたります。ベヘニルアルコールそのものは油性寄りで、これらは水にもなじみやすい、という違いを押さえると整理しやすくなります。
ベヘントリモニウムクロリドは髪の手触りをなめらかにする目的でヘアトリートメントによく使われます。プラスの電気を帯びやすい性質があり、髪の表面になじんでまとまりを出します。同じ「ベヘ」でもこれはスキンケアより髪向けの用途が中心です。
安全性は「絶対に安全」とも「危険」とも言い切れるものではありません。ここでは一般に知られている範囲で正直に整理します。
ベヘニルアルコールやベヘン酸は化粧品で長く広く使われてきた成分です。油性で揮発しにくく、消毒用エタノールのような脱脂やスースーする刺激は基本的にありません。一般的な配合量なら多くの人が問題なく使える成分です。とはいえどんな成分でも合わない方はいます。ゼロリスクではない、という前提は大切です。
日本ではかつてアレルギーなどを起こすおそれがあるとされた成分を「旧表示指定成分」として表示する仕組みがありました。ベヘニルアルコールやベヘン酸はこの旧表示指定成分には含まれていません。ただし指定されていない=誰にも合う、という意味ではない点には注意が必要です。
髪用に使われるベヘントリモニウムクロリドのような陽イオン性の成分は種類によっては人によって刺激を感じることがあると言われます。頭皮や肌に長く触れる使い方をする場合は様子を見ながら使うと落ち着いて判断できます。具体的な刺激の強さは成分や配合量、肌の状態によって変わるため一律の数値で断定はできません。
化粧品の全成分をチェックする
手元の化粧品も調べてみませんか。美肌プロ毒性評価が出ます。
ベヘニルアルコールとベヘン酸は油に近い性質を持つ成分です。クリームや乳液では感触を整えるだけでなく処方を安定させる役割も担います。
| 組み合わせ | 理由 |
|---|---|
| 乳液・クリーム | 水分と油分を均一に混ぜ、分離を防いで安定させる |
| セタノール・ステアリルアルコール | 同じ高級アルコールの仲間。炭素数が違うので感触の調整に使い分けられる |
| しっとりした感触を求める処方 | 炭素数が22と多く、少量でもコクが出る |
| 組み合わせ | 理由 |
|---|---|
| ベヘネス-30などの乳化剤 | どちらも処方を安定させる目的。両方入っていても効果が積み上がるとは限らない |
| 軽い使用感を求めるとき | しっとり寄りに仕上がるためさっぱり感がほしい場合は好みが分かれる |
成分表示でベヘニルアルコールを見つけたらセタノールやステアリルアルコールも一緒に入っていないか探してみてください。感触の作り方が見えてきます。
取り上げた成分について、美肌プロ毒性評価を一覧にしました。差があることが分かります。
| 成分 | 美肌プロ毒性評価 |
|---|---|
| ベヘニルアルコール | A |
| ベヘン酸 | A |
| ベヘネス-30 | C |
| ベヘントリモニウムクロリド | C |
| アラキルグルコシド・アラキルアルコール・ベヘニルアルコール | A |
| アクリル酸ベヘニル | B |
| ポリオキシエチレンベヘニルエーテル | B |
| ジベヘン酸グリセリル | A |
この記事でいちばんお伝えしたいのは「アルコール」という言葉の幅広さです。化粧品の世界でアルコールと呼ばれる成分には性質のまったく違うものが同居しています。
肌がスースーしたり乾燥を感じたりする原因になりやすいのはエタノール(エチルアルコール)に代表される鎖の短いアルコールです。揮発しやすく、さっぱりした使用感を出す目的で使われます。一方ベヘニルアルコールやセタノール(セチルアルコール)などは鎖が長く、油分としてしっとり感を残す成分です。名前は同じ「アルコール」でも働きは正反対に近いのです。
ですから「アルコールフリーを選びたい」という場合避けたいのはたいていエタノールのほうです。ベヘニルアルコールが入っているからといって、刺激の強い製品とは限りません。名前の一致ではなく、成分の性質で見ると迷いが減ります。もし判断に迷うときは成分の種類を一つずつ確認する習慣が役立ちます。
多くの方にとっては特別に身構える必要のない成分です。そのうえで次のような方は成分表示を確認してみると納得して選べます。
心配な場合は腕の内側など目立たない部分で少量を試し、赤みやかゆみが出ないかを確かめてから顔に使う方法があります。異常を感じたときは使用をやめ、続くようなら皮膚科などに相談してください。
ベヘニルアルコール・ベヘン酸が成分表示のどこにあるか、例で見てみます。
水、BG、グリセリン、スクワラン、トコフェロール、
ベヘニルアルコール、フェノキシエタノール、香料
↑ここ
化粧品の外箱や容器には原則としてすべての成分が表示されています。ベヘニルアルコールやベヘン酸を確認したいときはこの全成分表示から名前を探します。配合量の多い順に並ぶのが原則ですが、1%以下の成分は順不同です。表示の前のほうにあるほど多く配合されている、という目安は前半についてだけ成り立ちます。
ただし成分の位置だけで良し悪しは決められません。少量でも役割を果たす成分は多く、順番はあくまで目安です。表示の読み方をもう少し詳しく知りたい方は成分表示の読み方の記事もあわせてご覧ください。基本的なルールを押さえるとどの製品を見ても判断しやすくなります。
個別の成分について、由来や役割をさらにくわしく知りたいときは美肌プロの成分ページが便利です。今回ご紹介した仲間の成分ページをまとめました。気になるものから確認してみてください。
自分の肌に合いそうな成分を探したいときは成分の探し方の記事も参考になります。目的や肌質から成分を絞り込む考え方を紹介しています。
美肌プロの成分データベースならベヘニルアルコール・ベヘン酸の用途と安全性評価をそのまま確認できます。乳液かクリームを1本、「〜アルコール」で終わる成分を探してみてください。ベヘニル・セタノール・ステアリルが並んでいたらどれも油分です。エタノールとは逆の働きをしています。
名前の印象だけで避けてしまうと使い心地のよい製品を選択肢から外してしまうこともあります。成分の性質を知ったうえで自分の肌と相談しながら選んでいきましょう。
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読み終わったら、気になる1本を検索してみてください。全成分と評価が一覧で出ます。