クリームやリップの成分表示で「水添ヤシ油」「水添パーム核油」という名前を見ると少し身構えてしまいますよね。「水添」という言葉が化学的でなんだか手を加えすぎた油のように感じるからです。
「水添」とは植物油に水素を加える処理のことです。目的は油を酸化しにくく、扱いやすい状態に安定させることにあります。食品でもよく使われてきた技術で化粧品では肌をやわらかく整える油性成分として登場します。
この記事では水添した植物油がどんな成分なのか、名前が似た仲間との違い、そして「トランス脂肪酸が心配」という誤解まで良い面と注意点の両方を正直に整理します。読み終える頃には成分表示の「水添〇〇油」を落ち着いて眺められるようになるはずです。
水添した植物油はヤシやパーム、ナタネなどの植物からとれる油に水素を加えて作ります。もとになるのは私たちの食卓にもなじみのある身近な植物油です。
植物油には「不飽和脂肪酸」という、酸化して劣化しやすい構造が多く含まれます。この構造に水素を結びつけると油はより安定した形に変わります。これが水素添加、略して「水添」です。
水添をすると油はサラサラの液体から半固形やロウのような固さに変わることがあります。溶ける温度が上がり、空気に触れても酸化しにくくなるのが特徴です。化粧品にとっては時間がたっても品質を保ちやすい扱いやすい油になります。
これらの油の主な役割は「エモリエント」です。エモリエントとは肌の表面をおおって水分の蒸発をゆるやかにし、なめらかに整える働きのことです。クリームやリップ、ファンデーションなどに、しっとり感やのびの良さを出す目的で配合されます。
種類によっては油分を固める増粘・固形化の役割や、水と油をなじませる乳化を助ける役割を持つものもあります。一つのファミリーでも加工の仕方で使われ方が少しずつ違います。
「水添〇〇油」は名前がよく似ていて混乱しがちです。もとになった植物と、加工の度合いで役割が分かれます。代表的なものを表に整理します。
| 成分名 | もとの油 | 主な特徴・役割 |
|---|---|---|
| 水添ヤシ油 | ヤシ(ココナッツ)油 | やや固めの油。肌をやわらげ、製剤を安定させる |
| 水添パーム核油 | パームの種(核)の油 | ヤシ油と性質が近い固めの油性成分 |
| 水添パーム油 | パームの果肉の油 | 固形に近く、油分を固める役割にも使われる |
| 水添ナタネ油脂肪酸グリセリズ | ナタネ油 | 脂肪酸を再構成した油。しっとり感を出す |
| 水添オリーブ油エチルヘキシル | オリーブ油 | 軽い使用感のエモリエント油 |
名前に「脂肪酸グリセリズ」「アルコール」「エチルヘキシル」などが付くものは水添した油をさらに加工した成分です。もとの油そのものではなく、使用感や機能を調整するために形を変えています。名前が長くても出発点は身近な植物油だと考えると整理しやすくなります。
安全性は気になるところです。断定は避けつつ、一般に知られている範囲で正直にお伝えします。
これらの油は肌の上にとどまって働く油性成分で一般に刺激は少ない部類とされます。水添して安定させることで酸化した油による肌トラブルのリスクをむしろ抑えやすい面もあります。とはいえ肌に合うかどうかは人それぞれです。どんな油でも体質によってはあわないことがあります。
過去にアレルギーなどの報告があるとして表示が求められていた「旧表示指定成分」に、これらの水添植物油は含まれていません。植物由来の油性成分として、広く使われてきた実績があります。ただし「多くの人に使われている」ことは「すべての人に合う」ことを意味しません。この点は正直にお伝えしておきます。
なお油分が肌に合わずニキビにつながるかどうか(コメドの起こしやすさ)は、成分の種類や配合量、その人の肌質によって変わります。一律には言えないため心配な方はパッチテストや少量からの使用が目安になります。
化粧品の全成分をチェックする
手元の化粧品も調べてみませんか。美肌プロ毒性評価が出ます。
水添した植物油は常温で固形寄りになる油脂です。処方の中では「かたさ」と「安定性」を受け持ちます。
| 組み合わせ | 理由 |
|---|---|
| バーム・リップ・石けん | 常温で固形になりやすく、コクや固さを出したい製品に向く |
| 酸化を避けたい処方 | 水素を加えることで酸化しにくくなり、品質を保ちやすくなる |
| 乾燥が気になる肌向けの保湿 | 表面に油分の膜を作り、水分の蒸発を防ぐ |
| 組み合わせ | 理由 |
|---|---|
| さっぱり仕上げたい製品 | 固形寄りでしっとりするため軽さを求める処方には向かない |
| 似た名前の油脂が並ぶ | 水添ヤシ油・水添パーム核油・水添パーム油は採取する部位が違う別の成分 |
成分表示で「水添〇〇油」を見つけたらその製品がバームやリップのように固さのあるものかを見てみてください。入っている理由がつかめます。
水添した植物油の毒性評価です。もとの植物が違っても、この8つはすべてAでした。
| 成分 | 美肌プロ毒性評価 |
|---|---|
| 水添パーム核油 | A |
| 水添ヤシ油 | A |
| 水添パーム油 | A |
| 水添ナタネ油脂肪酸グリセリズ | A |
| クエン酸水添パーム油脂肪酸グリセリズ | A |
| 水添パーム油脂肪酸PEG-200グリセリル | A |
| 水添ナタネ油アルコール | A |
| 水添オリーブ油エチルヘキシル | A |
「水添」と聞くと健康の話題で耳にする「トランス脂肪酸」を連想する方がいます。ここは誤解が生まれやすいのでていねいに整理します。
トランス脂肪酸は油を部分的に水添する過程で生じることがある脂肪酸の一種です。健康面で話題になるのはこれを口から食べたときの影響についてです。議論の中心は「食品として体内に取り込む」場面にあります。
化粧品の水添植物油は肌の表面に働くエモリエントとして使われます。食べて体内に入れる前提の成分ではありません。食品での議論をそのまま化粧品にあてはめるのは少し違う話だと言えます。
また油を固形になるまでしっかり水添した「完全水添」に近い状態ではトランス脂肪酸は生じにくくなります。トランス脂肪酸が問題になりやすいのはあくまで「部分的に」水添した場合です。「水添=トランス脂肪酸が多い」と一括りにするのは正確ではありません。過度に不安になる必要はない、というのが正直なところです。
多くの方には問題になりにくい成分ですが、次のような方は成分表示を意識してみてもよいでしょう。
心配な場合は腕の内側などで数日試すパッチテストが目安になります。異常を感じたら使用を控え、必要なら専門家に相談してください。
水添ヤシ油・水添パーム核油は表示のうえでこの形で記載されます。
水、BG、グリセリン、スクワラン、トコフェロール、
水添パーム核油、フェノキシエタノール、香料
↑ここ
化粧品の裏面には配合されている成分がすべて記載されています。今回のファミリーは「水添」で始まる名前が目印です。「水添ヤシ油」「水添パーム核油」「水添パーム油」などを探してみてください。
成分は配合量の多い順に並ぶのが原則ですが、1%以下の成分は順不同です。リストの前のほうにあればその油が使用感を左右している可能性が高いと考えられます。全成分表示の読み方をもっと知りたい方はこちらの記事もあわせてご覧ください。成分表示の読み方はこちら。
美肌プロでは成分ごとに詳しい解説ページを用意しています。今回とりあげた水添植物油の仲間は次のページから確認できます。気になる成分名から見てみてください。
気になる成分から自分の化粧品を調べていく方法はこちらの記事が参考になります。成分の探し方はこちら。
美肌プロの成分データベースなら水添ヤシ油・水添パーム核油の用途と安全性評価をそのまま確認できます。リップかバームを1本、「水添」で始まる成分を探してみてください。ヤシ油・パーム核油・パーム油は採る場所が違う別の成分です。後ろの部分まで読むと区別がつきます。
名前の「水添」に身構えず、どんな油をどう安定させたものか、という視点で見ると全体像がつかめます。心配な点があれば少量から試すのが安全な進め方です。
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