韓国コスメ好きの間で「針美容液」「塗る針」という言葉を見かけるようになりましたよね。肌にのせるとチクチクする、あのタイプの美容液です。
化粧品はふつう刺激を感じさせない方向で作られます。わざとチクチクさせる製品は異色です。それでも人気が出たのは「効いている感じがする」から。
この記事ではその感覚にいったん距離を置いて、スピキュールが何者なのか、何が確かめられていて何が確かめられていないのかを整理します。
スピキュールは英語のspiculeで「骨片」という意味の言葉です。海綿(カイメン)という水中の生き物の体を支える、微細な針状の構造を指します。体を洗う天然スポンジの、あの海綿です。
化粧品の世界ではこの骨片を細かくして配合した製品が「スピキュールコスメ」と呼ばれています。覚えておきたいのは、スピキュールがマーケティングの言葉であって成分の名前ではないことです。
| 基本情報 | 内容 |
|---|---|
| 言葉の意味 | 英語で「骨片」。海綿の体を支える針状の微細構造 |
| 成分としての由来 | 海綿(カイメン) |
| 全成分表示での名前 | 加水分解カイメン、ヌマカイメン骨片エキス など |
| 「スピキュール」という表示名称 | 日本化粧品工業会のリストに収載なし |
| 美肌プロ毒性評価 | 加水分解カイメン・ヌマカイメン骨片エキスとも A |
日本化粧品工業会の成分表示名称リストを「スピキュール」で検索しても、該当する名前はありません。全成分表示はこのリストの名前で書くのが原則なのでパッケージにスピキュールとあっても裏面には別の名前で載ります。
探すべき名前はこの2つです。
| 表示名称 | 英語名 | 公式の定義・配合目的 |
|---|---|---|
| 加水分解カイメン | Hydrolyzed Sponge | カイメンを酸・酵素などで加水分解して得られたもの |
| ヌマカイメン骨片エキス | Spongilla Lacustris Spicule Extract | 淡水の海綿ヌマカイメンの骨片のエキス。配合目的は「剥離剤」 |
ヌマカイメン骨片エキスの英語名をよく見てください。Spicule(スピキュール)の語がそのまま入っています。流行の言葉と表示名称をつなぐ橋は英語名の中にあります。
もうひとつ意外な事実があります。加水分解カイメンの表示名称は2002年発行のリストに収載済みです。針コスメの流行は最近ですが、成分としては20年以上前から登録されています。
骨片は硬くて細かい針状の粒です。肌の上にのると物理的な刺激になります。チクチクの正体は成分の働きではなく粒の形そのものです。
成分データベース上ではヌマカイメン骨片エキスの配合目的が「剥離剤」に分類されています。古い角質を物理的に取り除く、スクラブに近い立ち位置ということです。
広告では「針が美容成分を肌の奥まで届ける」という説明を見かけます。ただし化粧品が働きかけられる範囲は角層までです。奥まで届けるという説明をそのまま受け取ることはできません。
チクチク=効いている、でもありません。刺激の強さと効果の大きさは別の話です。強く感じるときは肌に合っていないサインのこともあります。
化粧品の全成分をチェックする
手元の化粧品も調べてみませんか。美肌プロ毒性評価が出ます。
この2成分については、公開された刺激性・感作性の試験データを直接示せなかったため数値を挙げていません。分かっていることと確かめようがないことを分けて書きます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 皮膚への刺激 | 物理的なチクチク感がある。感じ方の個人差が大きい |
| 公開試験データ | 個別の刺激性・感作性の公開データは示せなかった |
| 使用実績 | 加水分解カイメンは2002年から表示名称リストに収載 |
| 美肌プロ毒性評価 | 加水分解カイメン A / ヌマカイメン骨片エキス A |
評価は2成分ともAです。ただしこれは配合成分としての評価であって、チクチクを感じないという意味ではありません。物理的な刺激を持ち味にする成分なので傷や炎症のある部位には使わず、初めての製品は狭い範囲で試してから広げてください。
物理的な刺激がある成分なので相性は働きの組み合わせより刺激の足し算で考えます。
| 組み合わせ | 理由 |
|---|---|
| セラミド | 使用後のうるおいを補うバリアケアの定番 |
| グリセリン・BG | 乾燥感をやわらげる保湿のベース |
| パンテノール | 肌荒れを防ぐ目的で併用されることが多い |
| 組み合わせ | 理由 |
|---|---|
| レチノール | どちらも刺激を感じやすく、同時期に始めると原因の切り分けができない |
| AHA・BHA(角質ケア成分) | 角質への働きが重なってやりすぎになりやすい |
| 高濃度のビタミンC | ピリピリ感が重なることがある |
組み合わせそのものが悪いというより刺激の総量の問題です。新しく足すものは1つずつ。遠回りに見えて、これが原因の切り分けにもなります。
パッケージに「スピキュール」とあったら裏面ではこの名前を探します。
水、BG、グリセリン、加水分解カイメン、パンテノール、…
水、プロパンジオール、ヌマカイメン骨片エキス、アラントイン、…
目印は「カイメン」の4文字です。針コスメをうたう製品でこの名前が見当たらないときは、何がチクチクの正体なのか説明を確かめてみてください。
硬い微細な粒が肌の表面を刺激しています。「刺さって成分を注入する」という説明は化粧品で確かめられる範囲を超えています。感じ方には個人差があり、ほとんど感じない人もいます。
いいえ。刺激の強さと効果は別です。ヒリヒリが続く、赤みが引かない。そんなときは使用を中止して様子を見て、続くようなら皮膚科の受診を検討してください。
角質への物理的な働きがある成分です。製品が指定する頻度を守り、肌の調子を見ながら間隔を調整してください。早く結果を求めて頻度を上げるのは逆効果になりがちです。
美肌プロの成分データベースにはこの記事で挙げた2つの表示名称がどちらも収録されています。
気になっている針コスメがあればその全成分表示と照らし合わせながら確認してみてください。
手元に針コスメがあったら箱の全成分表示から「カイメン」の文字を探してみてください。スピキュールという言葉が見当たらなくても、正体はちゃんとそこに書いてあります。
化粧品の全成分をチェックする
読み終わったら、気になる1本を検索してみてください。全成分と評価が一覧で出ます。