旧表示指定成分とは、1980年に旧厚生省が「体質によってはアレルギーなどの肌トラブルを起こすおそれがある」として化粧品への表示を義務づけた102種類+香料の成分グループです。2001年4月にすべての成分を表示するルールへ切り替わり、この制度は役目を終えました。頭に「旧」が付くのはそのためです。
先に押さえてほしいことがひとつあります。これは「危険な成分のリスト」ではありません。配合を禁止する決まりではなく、合わない体質の方が製品を避けられるように名前を知らせる決まりでした。食品のアレルギー表示を思い浮かべると近いです。卵や小麦の表示は「卵は危険」という意味ではありませんよね。
| 基本情報 | 内容 |
|---|---|
| 正体 | 表示が義務だった102種+香料 |
| 指定した機関 | 旧厚生省(1980年) |
| 指定の理由 | アレルギー等のおそれの告知 |
| 制度の現在 | 2001年4月に廃止・全成分表示へ |
| 中身の例 | パラベン、タール色素、PGなど |
サイト内の成分記事でも「旧表示指定成分に該当する?」という節をたびたび置いてきました。この記事はその受け皿です。制度の生い立ちから現在の配合実態まで、まとめて整理します。
いまの化粧品は全成分が書いてあるのが当たり前です。2000年以前は違いました。箱を裏返しても中身はほとんど分からず、肌トラブルを経験した方が同じ成分を避けたくても手がかりがありません。
そこで旧厚生省は、アレルギーなどの報告があった成分に限って名前の表示を義務づけました。1980年に整理されたこのリストが102種+香料です。防腐剤のパラオキシ安息香酸エステル(パラベン)や着色料のタール色素のほか、セタノールのようなごくありふれた基剤まで入っています。「おそれの報告があったものを並べた名簿」であって、危険度の順位表ではありません。
ちなみにこの考え方は医薬部外品でいまも生きています。医薬部外品には全成分表示の義務がないため、指定成分の表示が現在も求められます。薬用化粧品のパッケージで「表示指定成分」の文字を見かけるのはこの名残です。
2001年4月1日、化粧品の規制が大きく変わりました。国が種類ごとに承認する仕組みをやめ、欧米と同じ「禁止・制限リストで縛り、配合した成分はすべて表示する」方式へ移行したのです。2000年の厚生省通知がその枠組みを定めています。
すべて表示するなら、102種だけを選んで知らせる意味はなくなります。指定成分の表示制度はここで廃止されました。103種のどれが入っているかしか分からなかった時代から、1商品あたり数十の配合成分がすべて見える時代への転換です。消費者が得られる情報はむしろ増えました。
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1980年 | 102種+香料の表示を義務化 |
| 2001年4月 | 全成分表示へ移行・制度廃止 |
| 現在 | 化粧品基準の禁止・制限リストで管理 |
安全管理が消えたわけではありません。現在は化粧品基準という国のルールが配合禁止成分と上限を定め、防腐剤・紫外線吸収剤・タール色素は使ってよいものを列挙する方式で縛っています。リストの形が変わっただけで、管理はむしろ細かくなりました。
ネットには「旧表示指定成分が入っていない化粧品を選びましょう」という記事が今もあります。気持ちは分かりますが、リストの性格を考えると雑すぎる割り切りです。
| 整理の軸 | 実際のところ |
|---|---|
| 指定の意味 | おそれの告知。配合禁止ではない |
| 指定の基準 | 当時の報告ベース。危険度順ではない |
| 現在の評価 | 成分ごとに別。ひとまとめにできない |
| 注意が要る方 | 特定成分にアレルギーがある体質の方 |
| リスト外の成分 | 無条件に低刺激という保証はない |
リストには40年以上前の知見で選ばれた成分が並びます。その後に安全性データが積み上がった成分もあれば、市場からほぼ姿を消した成分もあります。運命は1つずつ違いました。だからこそ「全部まとめて避ける」より「自分に合わない成分の名前を知る」ほうが実用的です。
逆の注意もあります。リストに載っていない成分なら肌にやさしい、という保証はどこにもありません。1980年当時に存在しなかった成分や報告が少なかった成分は、そもそも選びようがなかったのですから。
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では旧表示指定成分はいま、どれくらい使われているのでしょうか。美肌プロは2026年10月時点の収録1,091商品のうち、全成分データのある1,066商品を集計しました(商品内の重複表記は1つに数え、医薬部外品表記などの別名は同じ成分に合算しています)。
| 旧指定成分(いまの表示名の例) | 配合商品数 |
|---|---|
| エデト酸塩(EDTA-2Naなど) | 415商品(38.9%) |
| クロルフェネシン | 182商品(17.1%) |
| 安息香酸とその塩(安息香酸Na) | 181商品(17.0%) |
| パラベン類(メチルパラベンなど) | 107商品(10.0%) |
| セタノール(セチルアルコール含む) | 106商品(9.9%) |
| ソルビン酸とその塩(ソルビン酸K) | 104商品(9.8%) |
| BHT(ジブチルヒドロキシトルエン) | 90商品(8.4%) |
| タール色素(黄4、赤504など) | 82商品(7.7%) |
| プロピレングリコール(PG) | 80商品(7.5%) |
| ステアリルアルコール | 67商品(6.3%) |
表の10グループのどれかを含む商品だけで727商品、全体の68.2%にのぼります。表に載せなかったセトステアリルアルコール(88商品)・サリチル酸(42商品)・トリエタノールアミン(31商品)などの指定成分まで広げると758商品(71.1%)。一括表示の「香料」も含めれば813商品、76.3%です。収録商品の4つに3つは旧表示指定成分と暮らしているわけで、「旧指定成分入り=危ない商品」という読み方では店頭の大半が候補から消えてしまいます。なおトコフェロールのように表示名から指定の範囲(合成のdl体)かどうか判別できない成分は数えていないため、71.1%は控えめに見積もった数字です。
2位に入ったクロルフェネシンは象徴的です。1980年のリストに名を連ねた防腐剤でありながら、いまも収録商品の17.1%で使われる現役の主力です。指定の歴史と現在の採用は、こうして普通に両立します。
一方で消えていった成分もあります。紫外線吸収剤のオキシベンゾン(オキシベンゾン-3)は収録商品でゼロ。基剤のラノリンアルコールは1商品、酸化防止剤のBHAも6商品にとどまりました。データの蓄積と処方の進化で選別が進んだ成分と、使われ続ける成分。リストの中身は一枚岩ではありません。
もうひとつ面白い逆転があります。リストに載っていなかった防腐剤のフェノキシエタノールは、いまや561商品(52.6%)と防腐剤の主役です。リスト掲載の有無と「使われるかどうか」が別の話であることが、この数字から読み取れます。
関係の深い成分は個別記事で掘り下げています。パラベンと、オキシベンゾンを扱う紫外線吸収剤はリスト掲載組。フェノキシエタノールとエタノールはリスト外の成分で、読み比べると制度の輪郭がつかめます。
タール色素・BHT・安息香酸Naは、それぞれ個別の記事で安全性と配合実態を解説しています。
102種を暗記する必要はありません。やることは2つだけです。
全成分表示は配合量の多い順に並びます(1%以下の成分と着色剤は順不同でよいルールです)。読み方の基本は全成分表示の読み方の記事にまとめてあるので、あわせて使ってください。
Q. 旧表示指定成分が入っていない化粧品のほうが肌にやさしいですか?
A. そうとは限りません。リストは1980年時点の報告で選ばれた名簿で、載っていない成分が低刺激という意味を持ちません。刺激の感じ方は成分ごと、体質ごとに違います。
Q. 「無添加」と書いてあれば旧表示指定成分はゼロですか?
A. 決めつけられません。「無添加」は何を添加していないかの決まりがない言葉です。香料だけ無添加の製品もあれば、防腐剤だけの製品もあります。確かめる手段は全成分表示だけです。
Q. 医薬部外品に今も「表示指定成分」と書いてあるのはなぜ?
A. 医薬部外品には化粧品のような全成分表示の義務がないためです。指定成分の表示という古い仕組みが、部外品では現役で消費者を守っています。
Q. 102種の一覧はどこで見られますか?
A. 成分名の一覧自体は公的資料や書籍で確認できます。ただ40年以上前の名称で書かれているため、いまの全成分表示と突き合わせるには読み替えが必要です。この記事の代表例と個別記事から入るほうが実用的だと考えています。
旧表示指定成分は特別なマークで区別されていません。全成分表示の中に、ほかの成分と同じ顔をして並んでいます。
水、BG、グリセリン、スクワラン、トコフェロール、
メチルパラベン、EDTA-2Na、香料
↑後半のこのあたりに登場しがち
防腐剤や酸化防止剤として入る場合は配合量が小さく、表示の後半に来ることが多めです。手持ちの化粧品をひとつ裏返して、知っている名前を探してみてください。
美肌プロの成分データベースでは、旧表示指定成分も含めて成分ごとの詳細と安全性評価を確認できます。今回の集計で該当最多だったエデト酸塩の代表格と、パラベンの代表格から成分分析の中身をのぞいてみてください。
40年前の名簿は、読み方さえ知っていれば今も役に立つ道具です。怖がる材料ではなく、自分の肌を知る手がかりとして使ってください。
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