成分表示の最後のほうにある「黄4」「赤504」。調べると「タール色素は危険」という記事がたくさん出てきて不安になりますよね。
先に結論から。日本の化粧品に使えるタール色素は、毛髪用など一部の例外を除き厚生省令で定められた83色だけです。美肌プロが収録1,091商品のうち全成分データのある1,066商品を集計したところ、タール色素が入っていたのは82商品。全体の7.7%でした。入っている量は着色に必要なごく微量で、成分表示でもほぼ最後尾に並びます。
ただし色素に対するアレルギーを持つ方がいるのも事実です。この記事では不安の出どころとなった歴史、国のルール、そして実際の配合データを順に見ていきます。
タール色素は化粧品や医薬品に色をつけるための合成色素です。「黄4」「青1」のように色の名前と数字の組み合わせで表示されます。
名前の「タール」は19世紀にコールタールから作られていた名残です。現在は石油から合成されており、コールタールが入っているわけではありません。名前だけが昔のまま残りました。
| 基本情報 | 内容 |
|---|---|
| 正体 | 石油を原料とする合成の着色料 |
| 名前の由来 | かつてコールタールから作られていた名残 |
| 役割 | 着色のみ。美容効果はない |
| 表示の例 | 黄4、青1、赤504、赤227など |
| 使える色 | 厚生省令で定められた83色のみ |
役割は色をつけること、それだけです。肌への働きを期待して入る成分ではないため「なくても製品は成立するのに、なぜ入れるの?」という疑問はもっともです。答えは見た目の価値。化粧水のほのかな色味も口紅の発色も、この成分の仕事です。
タール色素への不安には、はっきりした歴史の裏づけがあります。言われのない噂ではありません。
1960年代、日本では食品に使われていた一部のタール色素から発がん性の疑いが見つかり、食品添加物の指定取り消しが相次ぎました。アメリカでも1971年に旧ソ連の研究が赤色2号の発がん性を疑い、FDA(アメリカ食品医薬品局)は1976年に赤色2号を食品用リストから外しています。
化粧品の世界でも、タール色素はかつての表示指定成分制度でアレルギーなどのおそれがある成分として個別表示が義務づけられていました。2001年に全成分表示へ切り替わった今も「旧表示指定成分=注意すべき成分」という整理のしかたが残っています。
問題のあった色が実際に排除されてきた歴史がある。だからこそ「今使える色はどう管理されているのか」が本題になります。
日本では「医薬品等に使用することができるタール色素を定める省令」(昭和41年厚生省令第30号)が、化粧品に使えるタール色素を83色に限定しています。リストにない色素は配合できません(毛髪の洗浄や染毛を目的とする製品には別の定めがあります)。防腐剤や紫外線吸収剤と同じポジティブリスト方式です。
さらに83色は使える場所によって3つのグループに分かれています。
| グループ | 使える範囲 |
|---|---|
| 第一部(11色) | 飲み薬を含むすべての医薬品・化粧品。黄4、黄5、青1など |
| 第二部(47色) | 粘膜に触れる外用まで。赤227など200番台の色 |
| 第三部(25色) | 粘膜に触れない外用のみ。赤504など400〜500番台の色 |
番号を見ると使える範囲の見当がつきます。黄4や青1のような第一部の色は食品添加物として指定されている色と顔ぶれが重なります。一方で赤504のような500番台は口まわりの粘膜に触れない製品向けという区分です。色の番号は単なる通し番号ではなく、管理のレベルを映しています。
美肌プロのデータベースに登場する14色の毒性評価を調べました。14色すべてがAです。評価が割れている色はありませんでした。
| 評価項目 | 内容 |
|---|---|
| 美肌プロ毒性評価 | A(データベース登場14色すべて) |
| 皮膚刺激性 | ごく微量の配合では低いという記載が一般的 |
| アレルギー | 特定の色素に反応する体質の方がまれにいる |
| 配合量 | 着色に必要な量はごくわずか |
| 管理 | 省令のポジティブリスト(83色)で限定 |
正直に書くと、タール色素は「全員に無害」ではありません。特定の色素でかぶれた経験のある方にとっては避けるべき成分です。ただそれは香料や植物エキスにも言える話で、タール色素だけが特別に危険という根拠は現在の資料からは見つかりませんでした。過去に問題になった色が取り消されてきた結果として、今のリストがあります。
化粧品の全成分をチェックする
手元の化粧品も調べてみませんか。美肌プロ毒性評価が出ます。
ここからは美肌プロの独自データです。2026年10月時点の収録1,091商品のうち、全成分データのある1,066商品でタール色素の配合を集計しました(商品内の重複表記は1つに数えています)。
| 集計項目 | 結果 |
|---|---|
| 配合商品数 | 82商品(7.7%) |
| 登場した色数 | 14色 |
| 最多の色 | 黄4(40商品) |
| 2位グループ | 青1・赤227・赤504(各22商品) |
| 1商品あたり | 1色が39商品、2色が30商品、3色が13商品 |
意外だったのは製品の顔ぶれです。商品名から分類した目安ではクリーム・ジェル系16、美容液15、化粧水12が上位でした。口紅やアイシャドウだけの話ではなく、透明なはずの化粧水や美容液にも色味の演出として入っています。
配合順も見てみました。タール色素の位置は全成分表示の後ろから2番目が中央値で、93.9%の商品で表示の後半3割に登場します。全成分表示は配合量の多い順に並ぶのが原則ですが、1%以下の成分は順不同でよいルールです。最後尾付近の常連ということは、配合量がその「順不同ゾーン」の中でもごく小さいことを示唆します。
化粧品の色づけはタール色素の専売ではありません。表示で見かける着色剤はおおまかに3系統あります。
| 系統 | 表示の例と特徴 |
|---|---|
| タール色素 | 黄4、赤504など。鮮やかで少量でよく発色する |
| 鉱物系 | 酸化鉄、グンジョウ、酸化チタンなど。落ち着いた発色 |
| 天然系 | カルミン、ベニバナ赤など。虫や植物に由来する |
ファンデーションの肌色は主に酸化鉄で、タール色素の出番は少なめです。逆に透明な液に澄んだ色をつけたいときはタール色素が向きます。「天然系なら肌にやさしい」と思いたくなりますが、由来と刺激の少なさは別の話です。カルミンのような天然色素にもアレルギー報告があり、系統だけでは優劣を決められません。
色素アレルギーの経験がある方や、着色料は避けたいという方針の方へ。見分け方はシンプルです。
製品に色がついているのにタール色素の表示がない場合は、酸化鉄などの鉱物系か植物由来の色です。どちらを選ぶかは好みでかまいません。自分の肌に合わない色素が分かっている方だけ、その名前を覚えておけば足ります。
Q. 食品の着色料と同じものですか?
A. 黄4(食用黄色4号)のように同じ色素が食品にも使われている例があります。ただし食べる場合と肌に塗る場合では評価の観点が違うため、食品で使えることを肌への根拠にはできません。逆も同じです。
Q. 発がん性があると聞きました。
A. 過去に疑いの出た色素が食品のリストから取り消された歴史は事実です。現在の化粧品に使える83色はその選別を経た省令のリストで、リスト外の色素は配合自体ができません。それでも気になる方には無着色の製品という選択肢があります。
Q. 色つきの化粧水は避けるべきですか?
A. 色がある=危険ではありません。配合はごく微量で評価もAが並びます。過去に色素でかぶれた経験がある方だけ、その色の名前を成分表示で確かめてください。
Q. 海外の化粧品では事情が違いますか?
A. 使える色素のリストは国や地域ごとに別々で、日本で使えて海外で使えない色もその逆もあります。海外コスメを個人輸入する場合は日本のリスト外の色素が入っている可能性まで含めて、表示を読む必要があります。
実際の表示ではこんな位置に出てきます。
水、BG、グリセリン、スクワラン、トコフェロール、
フェノキシエタノール、香料、黄4、青1
↑ここ
色名と数字の組み合わせが目印です。たいてい香料と並んで最後尾にいます。手持ちの化粧品をひとつ裏返して探してみると、意外な製品で見つかるかもしれません。
美肌プロの成分データベースでは色素ごとの詳細と安全性評価を確認できます。今回の集計で最多だった黄4のページで成分分析の中身をのぞいてみてください。
美肌プロは着色料を善にも悪にも塗りません。歴史とルールとデータを並べたので、選ぶ基準はあなたの手元にあります。
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