化粧水の成分表示に「トレハロース」や「ソルビトール」といった名前を見つけて、少し戸惑った経験はありませんか。どれも食品でよく聞く名前です。お菓子や飲み物にも入っている糖の仲間が、なぜ化粧品に配合されているのか。気になる方は多いと思います。
じつはこれらは「糖類の保湿成分」と呼ばれる仲間です。糖のもつ「水を抱え込む力」を利用して、肌の水分をキープする役割をになっています。食品にも使われるほど身近な成分ですが、化粧品での働きは意外と知られていません。
この記事ではトレハロースをはじめとする糖由来の保湿成分について、良い面と気になる点の両方を正直にお伝えします。名前が似ていて混同しやすい成分の違いや、成分表示での見つけ方もあわせて解説します。読み終わるころには成分表示を見る目が少し変わるはずです。
糖類の保湿成分とはその名のとおり「糖」を由来とする保湿の成分です。ここでいう糖は砂糖そのものではありません。ブドウ糖やデンプンなど自然界に広くある糖をもとにつくられた成分をまとめて指します。
そもそも保湿成分とは肌の水分を保つのを助ける成分のことです。なかでも糖類の多くは「ヒューメクタント」と呼ばれるタイプにあたります。ヒューメクタントとは空気中や肌の中の水分を引き寄せて抱え込む性質をもつ成分です。むずかしく聞こえますが、要は「水をつかまえて離しにくくする成分」と考えるとわかりやすいです。
糖の分子には水となじみやすい構造がたくさんあります。この構造が水分子を引き寄せて、肌の表面にうるおいをとどめる働きをします。乾燥した季節に化粧水がしっとり感じるのはこうした保湿成分が水分を抱えているためです。
糖類が化粧品で好まれる理由はいくつかあります。ひとつは水にとてもよく溶けることです。化粧水のような水ベースの製品に混ぜやすく、使い心地をととのえやすいのです。
もうひとつは比較的おだやかな性質のものが多い点です。皮膚での試験でも刺激が少ないとされるものが中心で、食品にも使われてきた歴史がありますが、これは食品としての扱いであって肌での安全性とは別の話です。保湿だけでなく、製品にとろみや質感を与える目的で使われることもあります。
糖類の保湿成分には名前がよく似たものが並びます。「〜トール」で終わる成分が多く、見分けにくいと感じる方もいるでしょう。ここでは代表的な成分の特徴を、表で整理します。
| 成分名 | 由来・分類 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| トレハロース | 二糖類 | 水分を抱える力が高いとされる糖。食品にも広く使われる |
| ソルビトール | 糖アルコール | とろみやしっとり感を与える。甘味料としてもなじみ深い |
| マルチトール | 糖アルコール | ソルビトールと似た働き。保湿とうるおい感の補助に使われる |
| キシリトール | 糖アルコール | ガムでも知られる糖。さっぱりした使用感を助ける |
| グルコース | 単糖類 | いわゆるブドウ糖。ほかの糖成分のもとになる基本の糖 |
「糖アルコール」という言葉が出てきますが、お酒のアルコールとは別ものです。糖の一部の構造が少し変わっただけの仲間で、口にする甘味料としても使われます。名前にアルコールとついても乾燥を招くような刺激の強い成分ではありません。
糖は小さな単位がいくつつながっているかで呼び名が変わります。ひとつだけのものが単糖で、グルコースが代表です。ふたつつながると二糖で、トレハロースがこれにあたります。糖アルコールはこうした糖に少し手を加えた仲間です。
細かい分類まで覚える必要はありません。「どれも糖の仲間で、水を抱えてうるおいを保つのが得意」という点を押さえれば十分です。製品によって、複数の糖を組み合わせて使うこともよくあります。
成分表示には「グリコシルトレハロース」や「グリコシルトレハロース・水添デンプン分解物混合溶液」といった長い名前も登場します。これらはトレハロースに別の糖を結びつけたり、デンプン由来の成分と組み合わせたりしたものです。うるおいを保つ働きを高める目的で配合されます。
また「PPG-10メチルグルコース」のようにグルコースを土台にした成分もあります。糖をベースにしつつ、なめらかな使用感や水分保持を助けるよう設計された成分です。名前は複雑でも根っこは身近な糖だと考えると身構えずにすみます。
安全性は多くの方がいちばん気になる点だと思います。ここでは断定を避け、一般に知られている範囲で正直にお伝えします。
糖類の保湿成分は、全体として刺激が少ないタイプです。たとえばソルビトールは、食品添加物の指定添加物リスト・日本薬局方・医薬部外品原料規格2021のいずれにも収載され、40年以上の使用実績があります。皮膚刺激性・皮膚感作性はいずれも「ほとんどなし」と整理されています(出典: 化粧品成分オンライン)。
ただし出典には、ソルビトールの皮膚刺激性・皮膚感作性について詳細な試験データは見つかっていないとも書かれています。使用実績にもとづく判断だという点は、正直にお伝えしておきます。
アレルギーについてはどんな成分でも「絶対に起きない」とは言い切れません。糖類の保湿成分も例外ではありません。ただし香料や一部の防腐成分などと比べれば、反応が起きる頻度は高くありません。それでも肌の状態には個人差があるため心配な方はパッチテストを行うと確認しやすいです。
かつて日本には「旧表示指定成分」という制度がありました。アレルギーなどを起こすおそれが比較的高いとされ、表示が義務づけられていた成分の一覧です。トレハロースをはじめとする糖類の保湿成分はこの一覧には含まれていません。
ただし指定成分でないことは「誰にでも何も起きない」という保証ではありません。制度はあくまで過去の目安のひとつです。最終的には自分の肌で試して合うかどうかを確かめる姿勢が大切です。良い面が多い成分ですが、体質による差は残ることを正直にお伝えしておきます。
糖類の保湿成分の毒性評価です。由来の糖が違っても、この8つはすべてAでした。
| 成分 | 美肌プロ毒性評価 |
|---|---|
| グリコシルトレハロース | A |
| グリコシルトレハロース・水添デンプン分解物混合溶液 | A |
| ソルビトール | A |
| マルチトール | A |
| キシリトール | A |
| トレハロース | A |
| PPG-10メチルグルコース | A |
| マルチトール液 | A |
糖と聞くと、「甘そう」「ベタベタしそう」という印象をもつ方がいます。砂糖水を触ったときの、あのねばつきを思い浮かべるのかもしれません。しかし化粧品での糖類の保湿成分はそのイメージとは少し違います。
配合される量や種類によって、使用感は大きく変わります。さらっと仕上がるものもあれば、あえてとろみを出すために使うものもあります。糖だから必ずベタつく、というわけではありません。処方全体のバランスで決まるのです。
また「肌の上で糖分がエサになって菌が増えるのでは」と心配する声もあります。ただ化粧品は成分全体で品質が保たれるよう設計されています。糖類が入っているからといって、そのまま雑菌が増えるという単純な話ではありません。過度に不安に思う必要はないでしょう。
もうひとつ、「糖類の保湿成分だけで乾燥がすべて解決する」という期待も正直に言えば大きすぎます。ヒューメクタントは水を抱える成分ですが、抱えた水を肌の外に逃がさないためには油分などほかの成分の助けも必要です。糖類はうるおいを保つ働きの一部を担う存在、と理解するとバランスがよいです。
糖類の保湿成分は多くの方に使いやすい成分です。そのうえで次のような方はとくに注目してみるとよいかもしれません。
逆に過去に特定の糖成分でかゆみなどが出た経験がある方はその成分名を覚えておくと無理なく選べます。合わないと感じたら無理をせず、別の保湿成分を試すのもひとつの方法です。
トレハロースは、表示のうえでこの形で記載されます。
水、BG、グリセリン、スクワラン、トコフェロール、
トレハロース、フェノキシエタノール、香料
↑ここ
糖類の保湿成分を確認したいときは製品の全成分表示を見ます。ボトルの裏や箱に、小さな文字で並んでいる成分名の一覧です。ここに「トレハロース」「ソルビトール」「マルチトール」などの名前があれば、糖類の保湿成分が配合されています。
全成分表示は配合量の多い順に並ぶのが原則ですが、1%以下の成分は順不同でよいことになっています。上のほうにあるほど多く含まれる傾向はありますが、後半の並び順から量は読み取れません。あくまで目安として見てください。
成分表示の読み方そのものにまだ不慣れな方はこちらの記事もあわせてどうぞ。表示のルールや見るときのコツをやさしく解説しています。成分表示の読み方をチェックすると、成分探しがぐっと楽になります。
ここまで読んで、それぞれの成分をもっと詳しく知りたくなった方もいるでしょう。美肌プロでは成分ごとに特徴や評価をまとめたページを用意しています。気になる成分名からくわしい情報を確認してみてください。
ほかにも気になる成分を調べたいときは成分の探し方の記事が役立ちます。自分に合う成分を見つける手順をまとめているので、あわせてご覧ください。
美肌プロの成分データベースなら、トレハロースの用途と安全性評価をそのまま確認できます。化粧水を1本、「〜トール」で終わる成分を探してみてください。ソルビトールやマルチトールが見つかったら、それは糖の仲間です。お酒のアルコールとは関係ありません。
トレハロースやソルビトールなどの糖類の保湿成分は水を抱えてうるおいを保つのが得意な成分です。皮膚での試験でも刺激が少ないタイプが多く、扱いやすい仲間といえます。
一方でどんな成分にも体質による向き不向きはあります。指定成分ではないものの心配なときはパッチテストで確かめると確実です。使用感も種類によって違うので、自分の好みに合わせて選ぶとよいでしょう。成分表示を味方につけて、納得できるスキンケアを見つけてください。
本記事は以下の資料を参考に一般に公開されている情報の範囲でまとめています。各成分の詳しいデータは本文中でリンクした成分ページ(それぞれ出典を記載)もあわせてご確認ください。