エイジングケアといえばレチノール。名前は知られているのに、手を出しにくい成分ですよね。皮がむけたという話、赤くなったという話。検索すると不安になる情報のほうが目に入ります。
ややこしくしているのは「レチノール」という言葉が2つの意味で使われていることです。化粧品のレチノールと医薬部外品のレチノール。この2つは書ける効能の範囲が違います。同じ名前なのに。
さらに「パルミチン酸レチノール」のような仲間の成分もあります。全部まとめて「レチノール系」と呼ばれることが多く、成分表示を見ても違いが分かりません。
レチノールはビタミンAです。誘導体でも類似成分でもなく、ビタミンAそのものを指します。だから「純粋レチノール」という呼び方があります。
油に溶ける性質を持っているため配合されるのはクリームや美容液。水には溶けないので化粧水にはあまり入りません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 表示名 | レチノール |
| 慣用名 | ビタミンA(愛称は純粋レチノール) |
| INCI名 | Retinol |
| 性状 | 結晶。エタノールによく溶け、油脂に混ざり、水には溶けない |
| 配合目的 | 抗シワ、細胞賦活 |
| よく入っている製品 | 美容液、クリーム |
肌の上での働き方にも特徴があります。レチノールはそのまま働くのではなく、レチノール → レチナール → レチノイン酸という変換を経て、最終的にレチノイン酸として効果を発揮するとされます。
成分表示に出てくる「レチノール系」は1つではありません。レチノールに脂肪酸などをくっつけた誘導体が複数あります。
| 表示名 | どんな成分か |
|---|---|
| レチノール | ビタミンAそのもの。純粋レチノール |
| パルミチン酸レチノール | レチノールにパルミチン酸を結合させたエステル。簡略名はビタミンAパルミチン酸エステル |
| 酢酸レチノール | レチノールに酢酸を結合させたもの |
| リノール酸レチノール | レチノールにリノール酸を結合させたもの |
| レチノイルヒアルロン酸Na | レチノイン酸とヒアルロン酸を組み合わせたもの |
結合させた分だけ分子の性質が変わるので安定性や肌あたりも変わります。ただどれが上でどれが下、という話ではありません。製品全体の設計の中で選ばれています。
抗シワ作用の根拠として挙げられているのがこれです。ヒアルロン酸は水を抱え込む成分。表皮でその産生が促されることが、乾燥による小ジワの目立ちにくさにつながると説明されています。
細胞賦活と呼ばれる働きです。肌の表面は角化細胞が生まれては押し上げられ、最後に垢として落ちていく。その入れ替わりを後押しする方向に働くとされます。
2017年、資生堂の申請によって厚生労働省がシワ改善の有効成分として承認しました。「純粋レチノール」という呼び方が一気に広まったのはこのときです。
油溶性のビタミンなのでクリームの油分に溶かし込む形で使えます。とろみのある製品で見かけることが多いのは、この性質のためです。
いずれも公開されている根拠にもとづきます。
成分表示に「レチノール」とあっても、その製品が化粧品なのか医薬部外品なのかで意味が変わります。
| 区分 | 書ける表現 |
|---|---|
| 医薬部外品 | シワを改善する(承認された有効成分として、承認濃度で配合した場合) |
| 一般化粧品 | 乾燥による小ジワを目立たなくする(効能評価試験済みの場合) |
見分け方は簡単でパッケージに「医薬部外品」と書いてあるかどうかです。書いていなければ一般化粧品になります。
承認を受けた成分と、そうでない成分。中身は同じ「レチノール」なのに書ける言葉が変わる。少し不思議だと思いませんか。
同じシワ改善の有効成分としてはアデノシンも承認を受けています。読み比べると書き分けが見えてきます。
化粧品の全成分をチェックする
手元の化粧品も調べてみませんか。美肌プロ毒性評価が出ます。
| 評価項目 | 内容 |
|---|---|
| 美肌プロ毒性評価 | A |
| 皮膚刺激性 | 配合量や製品設計によって、赤みや皮むけを感じることがある |
| 皮膚感作性 | 化粧品に配合される濃度で問題となる報告は多くない |
| 使用実績 | 2017年に医薬部外品の有効成分として承認。長く使われている |
評価はAです。ただし刺激をまったく感じない成分という意味ではありません。
働きがはっきりしている分だけ肌が慣れるまで赤みやかさつきが出ることがあります。少量から始めて様子を見ながら頻度を上げる。遠回りに見えて確実です。
レチノールは光、空気、酸化、酸に対して非常に不安定だと報告されています。だから製品側では安定性を保つための工夫がされていて、それが処方に表れます。
| 組み合わせ | 理由 |
|---|---|
| 油性成分(スクワランなど) | 水に溶けず油脂に混ざる性質。油性基剤と組み合わせて配合される |
| 酸化を防ぐ成分(トコフェロールなど) | 空気や酸化に弱いため一緒に配合されていることが多い |
| 役割が違う成分(アルブチン・セラミドなど) | 働く場所が違うので同じお手入れの中で併用されることがある |
| 組み合わせ | 理由 |
|---|---|
| 酸性の成分(AHA・BHAなど) | 酸に不安定。同じタイミングで重ねるより、日を分けるほうが無難 |
| 他のレチノール系成分(パルミチン酸レチノールなど) | 目指す働きが同じ。複数入っていても足し算になるとは限らない |
表の中身は結局、レチノールの弱点を製品側がどう補っているかという話でもあります。成分表示で油性成分や酸化防止成分が近くに並んでいたらまさにその設計です。
光に弱いことは使う側にも関係します。夜のお手入れに回し、日中は日焼け止めを併用するのが無難です。
使い始めに赤みや皮むけが出ることはあります。ただ、むけるまで使うのが正解ではありません。
肌の反応は配合量、製品の設計、そのときの肌の状態で変わります。強く出ているなら合っていないサインかもしれない。我慢して続ける前に、いったん間隔をあけたほうが安全です。
「濃度が高いほど良い」もよく聞きますが、そもそも成分表示から濃度は読み取れません。分かるのは配合順のおおまかな位置まで。高濃度なら良いというものでもありません。
表示ではこう書かれます。誘導体なら「〇〇酸レチノール」の形です。
水、BG、グリセリン、スクワラン、レチノール、
トコフェロール、フェノキシエタノール、香料
↑ここ
前半にあるほど配合量が多い並びです。ただし1%以下の成分は順不同で書いてよいことになっているため後半の順序から量は読み取れません。詳しくは化粧品の全成分表示の読み方にまとめてあります。
上の例ではレチノールのすぐ後ろにトコフェロールが並んでいます。酸化を抑える狙いがあるのかもしれません。ナイアシンアミドのように役割の違う成分が同居していることもあります。そんなふうに読めるようになると成分表示が少し面白くなります。
美肌プロの成分データベースならレチノールの用途と安全性評価をそのまま確認できます。手元の美容液やクリームの全成分表示と見比べてみてください。1本ぶんの成分分析を自分の目でやってみると成分表示の見え方が変わります。
化粧品の全成分をチェックする
読み終わったら、気になる1本を検索してみてください。全成分と評価が一覧で出ます。
本文の規制・安全性に関する記述は次の公的資料で確認できます。