化粧品の成分表示を見ていると後ろのほうに「EDTA-2Na」という記号のような名前を見かけます。アルファベットと数字の組み合わせで、いかにも化学薬品という雰囲気があるため「これは何のために入っているんだろう」と気になった方も多いはずです。
EDTA-2Naは肌に何かの効果を与えるための成分ではありません。化粧品そのものの品質を保つために配合される成分です。水にわずかに含まれる金属イオンを抱え込むことで、中身が変色したり傷んだりするのを防いでいます。
この記事ではEDTA-2Naがどんな働きをしているのか、そして安全性をどう考えればよいのかを、良い面と気になる面の両方から整理します。名前の見た目で身構えてしまう成分だからこそ、実際のところを落ち着いて確認していきましょう。
EDTA-2Naは「キレート剤」と呼ばれるグループの成分です。キレートとはギリシャ語で「カニのハサミ」を意味する言葉が語源でその名のとおり金属イオンをハサミで挟むように抱え込む性質を指します。抱え込まれた金属イオンは動けなくなり、悪さをしなくなります。
ここで疑問がわきます。そもそも化粧品になぜ金属が入っているのでしょうか。答えは水です。化粧品の多くは水を主成分としていますが、水には目に見えないレベルでカルシウムや鉄などの金属イオンが含まれています。原料や製造の過程でごくわずかに混じることもあります。
このわずかな金属イオンが残っていると時間の経過とともに中身が変色したり、においが変わったり、油分の酸化が進みやすくなったりします。せっかくの化粧品が本来の状態を保てなくなるわけです。EDTA-2Naは金属イオンを先回りして抱え込むことで、こうした変化を起こりにくくしています。
洗浄料に配合される場合はもう一つの役割があります。水道水の硬度成分(カルシウムやマグネシウム)が石けん成分と結びつくと水に溶けにくいカスが生まれます。浴室の鏡や洗面台にできる白い曇りと同じものです。EDTA-2Naがあるとこのカスができにくくなり泡立ちや洗い上がりが安定します。
成分表示では末尾の数字や記号が違うだけの、よく似た名前がいくつも登場します。基本の骨組みは同じで、くっついている相手やその数が違うと考えると整理しやすくなります。
| 名称 | 特徴 | 化粧品での扱われ方 |
|---|---|---|
| EDTA-2Na | もっともよく使われる基本形。ナトリウムが2つ結びついたタイプで水にほどよく溶けます。 | 化粧水・乳液・シャンプーなど幅広く見かけます。 |
| EDTA-3Na | ナトリウムが3つのタイプ。2Naより水に溶けやすい性質があります。 | 水分の多い処方で選ばれることがあります。 |
| EDTA-4Na | ナトリウムが4つのタイプ。液性がアルカリ性寄りになります。 | 洗浄料などで使われることがあります。 |
| EDTA-2K | ナトリウムの代わりにカリウムが結びついたタイプ。 | 処方の設計にあわせて選ばれます。 |
| HEDTA-3Na | EDTAとよく似た構造を持つ別のキレート剤。 | 同じ目的で代わりに使われることがあります。 |
どのタイプが選ばれるかは、その化粧品の液性(酸性寄りかアルカリ性寄りか)や溶けやすさの都合で決まります。数字が大きいほど優れているという意味ではありません。使う人の側から見ればいずれも「品質を保つために少量入っているもの」という理解で十分です。
製品によっては「エデト酸塩」「エデト酸二ナトリウム」と書かれていることがあります。これらはEDTA-2Naと同じものを指す別の呼び方です。医薬部外品では表示名称のルールが化粧品と異なるため同じ成分でも見た目の名前が変わります。別の成分が追加されたと早合点しないようにしましょう。
化粧品の全成分をチェックする
手元の化粧品も調べてみませんか。美肌プロ毒性評価が出ます。
安全性は多くの方が気にされる部分だと思います。ここでは断定を避けつつ、一般に言われていることを正直に整理します。
| 評価項目 | 内容 |
|---|---|
| 皮膚刺激性 | 通常の配合量ではほとんどなし(高濃度では刺激の報告あり) |
| 皮膚感作性 | 重大な報告なし |
| 眼刺激性 | 目のまわりに使う製品では配慮される項目 |
| 使用実績 | 化粧品で長く使われてきた実績あり |
| 配合量の目安 | ごく少量(製品全体の1パーセント未満で目的を果たすことがほとんど) |
| 美肌プロ毒性評価 | 成分ごとに異なる(この記事の後半に一覧があります) |
EDTA-2Naは化粧品で長く使われてきた成分です。配合量はごく少なく、製品全体の1パーセントに満たない量で目的を果たせることがほとんどです。成分表示の後ろのほうに書かれているのは、配合量が少ないことの表れでもあります。適切に配合された製品なら多くの人にとっておだやかに使えます。
一方でどんな成分にも合う合わないはあります。肌が敏感な方や、バリア機能が弱っているタイミングではまれに刺激を感じることがあります。特に高い濃度で使われた場合や、目のまわりなど皮膚の薄い部分では注意したいところです。これはEDTA-2Naに限らず、多くの成分に共通して言えることです。
環境への影響が議論されることもあります。EDTAは自然界で分解されにくい性質を持つため排水として流れたあとの挙動が研究されてきました。この点を考慮して、より分解されやすい別のキレート剤を選ぶメーカーもあります。肌への安全性とは別の観点の話ですが、成分選びの背景として知っておくと理解が深まります。
なお具体的な数値やパーセントを本記事で断定することは控えます。成分ごとの詳しい評価は次に紹介する成分ページにまとめていますので気になる方はそちらもあわせてご確認ください。
EDTAの仲間5つの毒性評価です。末尾の違いで評価も分かれます。ひとつずつ確認してみてください。
| 成分 | 美肌プロ毒性評価 |
|---|---|
| EDTA-2Na | B |
| EDTA-3Na | B |
| EDTA-4Na | B |
| EDTA-2K | A |
| HEDTA-3Na | A |
インターネットでは「EDTAは金属を抱え込むのだから肌に必要なミネラルまで奪ってしまう」という話を見かけることがあります。心配になる説明ですが、少し丁寧に整理してみましょう。
たしかにEDTAには金属イオンを抱え込む性質があります。ただし化粧品に入っている量はごくわずかで、しかもその多くは容器の中にある水由来の金属イオンを抱え込むことにすでに使われています。肌にのせてから体の中のミネラルを取り込みにいくという単純な話ではありません。
もう一つ知っておきたいのは、キレート剤が入っていない製品が必ずしも優れているわけではないという点です。金属イオンによる変質を防ぐ手立てがないと、中身が早く傷んでしまう可能性もあります。品質を保つ工夫があるからこそ、最後まで安定した状態で使えるという面があります。
「キレート剤だから避けるべき」「入っていれば絶対に問題ない」——どちらも極端な見方です。成分名のイメージだけで判断せず、何のために入っているのかを知ったうえで、自分の肌に合うかどうかで考えるのが現実的です。
EDTA-2Naは多くの人が問題なく使える成分ですが、次のような方は少し気にとめておくと自分のペースで付き合えます。
あてはまる方はいきなり顔全体に使うのではなく、腕の内側などで試してから始めると自分に合うか確かめやすくなります。しみる感じがあれば使用をやめて、続くようなら皮膚科医に相談してください。
全成分表示を開くとEDTA-2Naは次のように並んでいます。
水、BG、グリセリン、スクワラン、トコフェロール、
EDTA-2Na、フェノキシエタノール、香料
↑ここ
EDTA-2Naが入っているかどうかは製品裏面の全成分表示で確認できます。「EDTA-2Na」「エデト酸塩」といった名前を探してみましょう。配合量が少ない成分なので表示の後半にまとまって書かれていることがほとんどです。
成分表示は独特のルールで並んでいて、初めて見ると読みにくく感じるかもしれません。表示の順番の意味や名前の探し方のコツはこちらの記事でくわしく解説しています。化粧品の全成分表示の読み方もあわせてご覧ください。
美肌プロではEDTAの仲間について、成分ごとに評価をまとめています。それぞれのページで特徴を見比べてみてください。
気になる成分をもっと自分で調べてみたい方は成分の探し方の記事も参考になります。目的や肌悩みから成分を探すコツを紹介しています。
美肌プロの成分データベースならEDTA-2Na(キレート剤)の用途と安全性評価をそのまま確認できます。手持ちの化粧水で成分表示のいちばん後ろのあたりを読んでみてください。EDTA-2Naや「エデト酸塩」があればそれは中身の品質を守るために入っています。
EDTA-2Naは水にわずかに含まれる金属イオンを抱え込み、化粧品の変色や品質の劣化を防ぐキレート剤です。肌に働きかける成分ではなく、製品そのものを守るために少量配合されています。洗浄料では石けんカスを防ぎ、泡立ちを安定させる役割もあります。
名前の見た目から不安に感じやすい成分ですが、配合量はごくわずかで、長く使われてきた実績があります。一方で肌が敏感なときにはまれに刺激を感じることもあります。「危険」でも「絶対大丈夫」でもなく、何のために入っているかを知って、自分の肌の状態に合わせて選ぶのが賢い付き合い方です。
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