お気に入りのリップクリームやバームの全成分表示を見て「マイクロクリスタリンワックス」「ミツロウ」といった名前に気づいたことはありませんか。読み方も難しく、何のために入っているのか分かりにくい成分です。「石油からできたワックス」と聞くと、少し気になりますよね。
ワックス成分は口紅やバーム、クリームなどに「かたさ」や「ツヤ」を与えるために使われます。ワックスがなければ、リップは形を保てず、バームはとろけて指の間から流れてしまいます。使い心地を支える、大切な役割の成分です。
この記事では代表的なワックス成分であるマイクロクリスタリンワックス、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウなどの違いや役割を、初心者の方にもわかるようにやさしく解説します。良い面だけでなく、気にした方がよい点も正直にお伝えします。
ワックスとは常温でかたい固体になる油分の仲間です。日本語では「ロウ」とも呼ばれます。ロウソクのロウをイメージすると分かりやすいです。手のひらの温度でゆっくりやわらかくなり、冷えるとまた固まる性質を持っています。
ワックスは大きく分けて、由来ごとに三つのグループがあります。ミツバチが作る「動物由来」、植物の葉や実からとれる「植物由来」、そして石油などを原料に精製する「鉱物・合成由来」です。それぞれ性質が少しずつ違い、化粧品では目的に合わせて使い分けられています。
化粧品でのワックスの主な役割は三つあります。一つ目は液体の油を固めて形を保つ「固形化」です。口紅がスティックの形を保てるのはワックスのおかげです。二つ目は表面につやを出す「ツヤ出し」です。三つ目は油分の膜を作って水分の逃げを防ぐ「保護」の働きです。バームがくちびるを乾燥から守るのはこの性質によります。
ワックスは美容成分そのものではありません。化粧品の「使い心地」や「形」を整える土台として働きます。表からは見えにくいもののテクスチャーの良し悪しを大きく左右する成分です。
ひとくちにワックスといっても由来やかたさ、ツヤの出方はさまざまです。代表的な四つのワックスを表で整理します。それぞれの特徴を知ると、成分表示を見たときにイメージがしやすくなります。
| 成分名 | 由来 | 特徴 | よく使われる製品 |
|---|---|---|---|
| マイクロクリスタリンワックス | 石油(鉱物) | 細かい結晶でねばりがあり、割れにくい膜を作る | 口紅、バーム、クリーム |
| ミツロウ(ビーズワックス) | ミツバチ(動物) | やわらかめでのびがよく、しっとりした感触 | リップ、バーム、乳液 |
| キャンデリラロウ | 植物(キャンデリラ草) | かためでツヤが出やすい。植物由来でよく使われる | 口紅、バーム |
| カルナウバロウ | 植物(ヤシの葉) | とてもかたく融点が高い。強いツヤを出す | マスカラ、口紅、艶出し |
マイクロクリスタリンワックスは石油を精製して作られるワックスです。名前のとおり結晶がとても細かく、ねばりのある性質を持ちます。この性質のおかげで、割れにくくしっとりした膜を作れます。融点の高いタイプは「高融点マイクロクリスタリンワックス」と呼ばれ、暑い季節でも溶けにくい口紅などに使われます。
ミツロウはミツバチが巣を作るときに分泌するロウです。数千年前から使われてきた歴史のある成分で、やわらかめでのびがよいのが特徴です。精製の度合いによって色や香りが変わり、しっかり精製して白くしたものは「サラシミツロウ(精製ミツロウ)」と呼ばれます。ミツバチ由来のため動物性を避けたい方は確認するとよい成分です。
キャンデリラロウはメキシコなどに育つキャンデリラ草から、カルナウバロウはブラジルのヤシの葉からとれます。どちらも植物由来で、かたくツヤが出やすいのが共通点です。中でもカルナウバロウは融点が非常に高く、少量でも製品にしっかりとしたコシとツヤを与えます。植物由来のワックスを探している方に選ばれやすい成分です。
成分表示には「イソステアリン酸ワックス」「アクリル酸ワックス」などワックスに別の成分を組み合わせた名前も登場します。これらはベースのワックスに機能を足したもので、感触やツヤ、なじみを調整する目的で使われます。名前が長くても基本の役割は形を整えツヤを出すことにあります。
ワックス成分は口紅やバームなど直接くちびるにふれる製品にも古くから広く使われてきました。一般に刺激は少ない成分です。ただし肌への反応には個人差があります。良い面と注意点の両方を正直に見ていきます。
まず、ここで紹介したワックス成分はいずれも旧表示指定成分(かつてアレルギーを起こすおそれがあるとして表示が義務づけられていた成分)には該当しません。長い使用実績があり、化粧品の油性成分としては比較的おだやかな部類に入ります。
一方で注意点もあります。ミツロウはミツバチ由来のためまれにアレルギーの原因になることが知られています。ハチ製品(はちみつやプロポリスなど)でかゆみが出た経験がある方は念のため成分を確認すると良いでしょう。また石油由来のマイクロクリスタリンワックスについては「石油系だから危険」というイメージを持たれることがありますが、化粧品用は不純物を取り除いて精製されており、原油とは別物です。
とはいえどんな成分にも肌に合う・合わないの個人差はあります。「絶対に刺激が出ない」と断定できる成分は存在しません。心配な場合は腕の内側などで試してから使うと自分の肌との相性を確かめられます。
取り上げた成分の美肌プロ毒性評価です。同じ仲間でも評価は分かれます。
| 成分 | 美肌プロ毒性評価 |
|---|---|
| 高融点マイクロクリスタリンワックス | A |
| サラシミツロウ | A |
| イソステアリン酸ワックス | C |
| マイクロクリスタリンワックス | A |
| カルナウバロウ | A |
| アクリル酸ワックス | B |
| ミツロウ | A |
| キャンデリラロウ | A |
ワックス成分についてはいくつかの誤解が広まっています。ここでは代表的なものに正直にお答えします。
誤解1「ワックスは毛穴を詰まらせて肌に悪い」。ワックスは油分の膜を作るためこの不安を持つ方は少なくありません。ただし膜を作ること自体は水分の逃げを防ぐという良い働きでもあります。詰まりやすさは配合量や製品の設計、そして使う人の肌質によって変わります。すべてのワックスが一律に毛穴を詰まらせるわけではありません。ニキビができやすい方は、顔全体に厚く塗る製品では様子を見ながら使うとよいでしょう。
誤解2「石油由来より植物由来のほうが必ず肌にやさしい」。天然や植物由来という言葉は良い印象を与えますが、由来と肌へのやさしさは必ずしも一致しません。動物由来のミツロウでアレルギーが出ることはありますし、精製された石油由来のワックスがおだやかに働くこともあります。大切なのは由来のイメージではなく、自分の肌に合うかどうかです。
誤解3「ワックスは肌に何の意味もない添加物」。ワックスがなければ、口紅は形を保てず、バームは指からとろけ落ちてしまいます。使い心地や製品の形を成り立たせる、欠かせない役割を持つ成分です。
ワックス成分は多くの方に問題なく使われていますが、次のような方は成分表示を確認してみると良いでしょう。
逆に言えば、これらに当てはまらない方はワックス成分を過度に心配する必要はありません。口紅やバームの使い心地を支える、身近な成分だととらえてよいでしょう。
化粧品のワックス成分は、成分表示でこんなふうに書かれます。
水、BG、グリセリン、スクワラン、トコフェロール、
高融点マイクロクリスタリンワックス、フェノキシエタノール、香料
↑ここ
化粧品の全成分表示は配合量の多い順に記載されるのが原則ですが、1%以下の成分は順不同でよいことになっています。ワックス成分を探すときは「ワックス」「ロウ」という文字に注目してみましょう。「マイクロクリスタリンワックス」「ミツロウ」「キャンデリラロウ」「カルナウバロウ」といった名前で書かれています。
口紅やバーム、スティック状の製品ではワックスが上位に記載されていることが多いです。逆にさらっとした化粧水などにはほとんど入っていません。製品の形状とワックスの量には関係があると覚えておくと便利です。
全成分表示の基本的な読み方をもっと知りたい方はこちらの記事もあわせてご覧ください。成分表示の読み方をやさしく解説しています。
美肌プロではそれぞれのワックス成分について役割や特徴を個別のページで確認できます。気になる成分名から詳しい解説をチェックしてみてください。
お手持ちの化粧品に入っている成分を調べたいときは成分の探し方の記事も参考になります。名前から効率よく成分を探すコツを紹介しています。
美肌プロの成分データベースなら、化粧品のワックス成分の用途と安全性評価をそのまま確認できます。口紅かリップバームを1本、「ワックス」「ロウ」の文字を探してみてください。ミツロウなら動物由来、キャンデリラ・カルナウバなら植物由来です。動物性を避けたい方はここを見ます。
ワックス成分は口紅やバームに「かたさ」と「ツヤ」を与え、使い心地と形を支える成分です。マイクロクリスタリンワックスはねばりのある膜、ミツロウはやわらかくしっとり、キャンデリラとカルナウバは植物由来でかたくツヤが出やすい、という違いがあります。
安全性については旧表示指定成分に該当せず長い使用実績がありますが、ミツロウのアレルギーなど個人差はあります。由来のイメージだけで判断せず、自分の肌との相性を確かめることが大切です。成分表示を読めるようになると、化粧品選びがぐっと楽しくなります。
本記事は以下の資料を参考に一般に公開されている情報の範囲でまとめています。各成分の詳しいデータは本文中でリンクした成分ページ(それぞれ出典を記載)もあわせてご確認ください。